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ボディロッキンで激ヤバ

ワンパクでもいい。ボディロッキンで激ヤバであれば。

【ネタバレ】悪意をもって描く青春~『日本で一番悪い奴ら』~

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 映画『日本で一番悪い奴ら』を観てきました。

 映画全編を通して最高。楽しい。でも、最悪。という素晴らしい映画でした。

 

 本当に色々と褒める所はいっぱいあると思いますが、今作の個人的に一番良かった所はキャスティングでした。

 主演の綾野剛を筆頭として、出てくる全員が最高に合っていたというだけでなく、「本当にこういう人っぽい」と思わせるだけの演出もあり、見ていて映画であることを忘れそうになりました。

  YOUNG DAISに関しては、『TOKYO TRIBE』での演技とはまた違う演技で、これも凄く驚きました。『TOKYO TRIBE』でも自然な演技だったので「この人は演技してなくて、こういう人なんだろうな」と思っていたんですが、今作観ても「この人こういう人なんじゃ ねーか」と思わせるほどの自然さ。良かったです。

 綾野剛については、もう、何も言うことないです。ほんとうに最高でした。最初の「勃起してんじゃねーよ」「勃起してねーよ」のやりとりは映画館で吹き出してしまいました。

 ただ、その中でも特に良かったのは、植野行雄(デニス)でした。というか、本当に個人的にはMVPでした。というのも、植野行雄の今回の作品における境遇というものが、演じていたラシードと非常に似通っていた、ということが大きいと思います。

 植野行雄はお笑い芸人であり、役者ではありません。また、ポルトガル人のハーフでありますが、外国語は全く喋れない。なのに、この大きさのタイトル作品に出てしまっている。この異物感こそ、ラシードというキャラクターに最も必要な「異国から来た人」感につながっていると思います。自分の元いた場所(国)から遠くはなれている寄る辺の無さ、それでもやっていけるだけの楽天さ、そして、それでも襲い掛かってくる運命。それら全てを、植野行雄は非常に頑張って、体当たりで演じれていたと思います。本当に凄いと思います。

 

 ただ、この植野行雄のキャスティングが、この作品の根底に流れている「悪ふざけ」というか「意地の悪さ」というものを表してるのかな、とも思います。

 この作品の主人公の描き方は『凶悪』でのピエール瀧に似た立ち位置というか、方向性としては似ていると思うんですよね。

 それは、悪いことをしている人間こそが、実は弱い人間であり、何かにすがっていないと行動を起こせない、生きていけない、というキャラクター造形の方向性と思われます。

 なぜこの二人が悪事を働いているのに魅力にあふれているのか、それはこの二人が非常に人間らしいから、と言えます。つまり、人間らしい弱さがあり、そこに悲哀があるから、とも言えます。

 更に今回は、ただでさえ悲哀の対象になりうる人物の、ある意味で青春を描いている、とも言えるんです。中村獅童、YOUNG DAIS、ラシードと一緒に悪事を働いている主人公は、図らずも青春を過ごしているとも言えます。そこには、主人公の全能感があるわけです。そして、そこから転がり落ちていくからこそ、より弱さが引き立ち、人間的な魅力を表現できる、とも言えるわけです。(『凶悪』と本作のテーマ的な違いはここにあると思います。『凶悪』はそれこそ善悪についての問があったわけですが、今作ではその色合いは薄く、どちらかと言うと主人公の人生を描いているにとどめています)

 その落差を演出することこそ、この映画の「意地の悪さ」であり、この監督の「悪ふざけ」なんだと思います。

 インタビューを読むと、この映画はゲラゲラ笑いながら撮っていた、とのことです。でも、一つの言葉であったり、シーンであったり、それだけを切り取るとユーモアにあふれた場面が多いこともうなずけます。

 ただ、それは登場人物たちをドライに、それこそ客観的に見ているからこそできる演出とも言えます。

 つまりは、キャスティングをしている時点で、その悪ふざけは始まっていたんじゃなかろうか、と思ってしまうわけです。「こういう人物なら、こいつ当てとけば、面白いんじゃね?」というゲラゲラ笑いながらの会合が行われたのでは、と勘ぐってしまいます。

 

 ブラックユーモアに溢れ、一人の男の青春と転落を描いた、和製スカーフェイスとしてかなりレベルの高い作品になっていると思います。

 個人的には90点です!