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【ネタバレ】変化球~『ダンケルク』を観て~

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 クリストファー・ノーラン監督作品『ダンケルク』を観てきました。二回観ました。

 

 

・ただの戦争「映画」ではない

 どちらかと言うとアトラクションとして楽しむ作品に思える。効果音やハンス・ジマーの音楽、終始鳴り響く時計の音など、基本的には見ている人間を戦争の中に没入させようとする意思を感じさせる。

 音響設備に力が入っている映画館で観ると、より良い感想を覚えるのではないかと思う。

 特に、ダンケルクでのシーンは素晴らしい絶望感で、今まで見てきた戦争映画と並び称されることとは思う。少なくとも、不条理に人が死ぬ、という一点においては優れた映画だと思われる。

 

 

 

 

・ストーリーのある映画ではない

 今作は、物語として楽しむのではなく、どちらかと言えばアトラクションとして樂しむような作品なのだと思う。

 意図的にそうしているのかは分からないが、少なくとも登場人物への感情移入がしやすい作品ではない。また、その時代の常識や戦場での常識などへの説明も無いため、そういった知識が不足した観客は読解力や類推力が求められる。つまりは、いちいち考えなくてはならないので、映画に入りにくい。

 ここはもう、ファンタジー世界を見るくらいの気持ちで見てていいのではないかと思う。

 

 

・時制の変化が変化球すぎる

 ノーラン作品といえば『メメント』だが、それにも似た時制のランダム配置が行われている。その為、二回目に見た時は「あ、ここにつながるのね」と面白く感じたが、一回目はよくわからなかった。

 

 

チャーチルの演説は感動的だが

 予告編では絶望的な引用をされていたチャーチルの演説を、本編ではクライマックスに配置し、感動的なスピーチとしていたが、あの内容で戦場に行っていた兵士が喜んでいたのか疑問だ。

 命からがら国に戻ってきて「まだ戦うぞ」と言われて「よっしゃー!」となる人が多いものだろうか。しかも、今作の絶望的な状況の一つに、軍(国)からの支援があまりなかった、というものもある。そして、その国のトップが(女王はいるが)スピーチの主だ。

 これは、この時代、この国に生きている人間には響く言葉なのかもしれないので、個人的にはこう思った、というだけではあるが。

 

 

・人物の内面が描けていない

 というより、描く暇く暇がなかったのだろう。ただ、カットしなくてもいい部分をカットしたせいか、人物への感情移入はできなくなっている。

 ダンケルクの兵隊たちは死への恐怖があることは簡単にわかるので感情移入はし易いが、旅客船の人間たちの説明がないので、彼らへの感情移入は凄く難しい。彼らが何故ダンケルクに向かっているか、というのが表層的にしか分からない。

 何度も観れば分かるのだが、初回ではわかりにくく、またノイズに感じてしまう。

 更に兵隊たちについても、命からがら生き残ったのに「帰ったら叩かれるぜ」という心配。分からなくもないが、いきなりすぎて帰ってきた余韻が消えてしまった。そうやっておいて、実はみんな歓待しましたよ、というのをやりたいのは分かるのだが、あまりにも性急にやりすぎているように感じた。