ボディロッキンで激ヤバ

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【ネタバレ】帰る国とは~『キングスマン ゴールデン・サークル』を観て~

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・正直、前作よりも楽しい。

 キングスマンの一作目は、実は大好きな作品ではない。と言うのも、キック・アスが最高すぎて、思想的なものを軽く排除したキングスマンはそこまで感動を覚えなかったからだ。ただ、娯楽作品として見れば素直に楽しく、また現代のスパイアクション映画として興味深い作品であったことは確かだったと思う。

 今作は、その楽しさをより増しており、スパイあるあるも大量に詰め込んだ、最高の娯楽作品になったと思う。

 

長回しのアクションは脱帽

 もちろん、擬似的なワンカットだとは思うが、長回しの戦闘シーンが素晴らしく、正直感動すら覚えた。

 すごいのは、一対一の戦いではなく、一対多数の、しかも息のあった長回しの戦いであり、その場にある地形の応用であったり、もはや他の追随を許さぬほどに洗練されたアクションシーンだと思う。

 

・より明確な、選民思想への反対表明

 マシューヴォーン作品で必ず扱われるテーマだが、今回も健在だ。前作と比べて、その意見は過激になっている感すらある。

 それは、恣意的な選民思想に対する、選ばれない者によるカウンターである。

 キングスマン一作目で言われる「マナーが人を作る」という言葉が示す通り、誰しもが自ら高貴な存在になれる。つまりは、他人が勝手に選んだ高貴な人間というものは間違いである、ということだ。ちなみに、「キック・アス」では「高貴な人間」は、「スーパーヒーロー」に言い換えることができる。ヒーローとは、他人に認められてなるものではない。自らそうなり得るべく、努力し、勝ち取る者なのだ。だから、「キック・アス」において主人公は真のヒーローになったのだ。自らが何者であるか、を真に獲得したからこそ、彼はヒーローにもなれたし、また普通の人間にもなれた。

 キングスマン一作目では、その基準を決めようとするのは貴族であり、または億万長者だ。アーサーが敵に寝返るのは当たり前というか、彼は最初から敵とほぼ同じ存在であったと言える。何故なら、彼もまた他人を恣意的な基準で選別していたにすぎないのだから。

 今作で、それはより過激な方向にシフトした。今作の真なる敵は、実は麻薬王ではなく、そして大統領ですらない。それは、普通の人々の持っている偏見だ。今作における合衆国政府は、皮肉な存在だ。彼の行なっている行為は、恐らくは一部の(そして多数)の人間にとっては正しく見えるに違いないし、民主主義でいうところの正しい行いだ。彼らは民衆の中のマジョリティを代弁した存在でしかなく、非常に空疎な存在として描かれている。恐らくは、数字で見た麻薬中毒者の犯罪率も高いのかもしれない。しかし、それは人間を数値に貶める行為だ。そして、その数値上での線引きこそが、恣意的な線引きに他ならない、と言うことだ。

 前作は、例えば逆の線引きもしてしまう。貴族階級だから、人を恣意的に選別してしまう、という、これもまた誤った線引きだ。今作で言いたいのは、生まれは関係なく、人は時に誤った線引きをしてしまう、ということだ。

 民主主義は間違いを犯す。そして、その間違いが殺すのはマイノリティーである。麻薬中毒者の症状の推移は面白い。始めは色がつくだけだが、そのうち踊り始め、最後には静かになり、死ぬ。昨今の、よくネットで馬鹿にされている対象によく似ている。彼らは声を上げて抗議すれば馬鹿にされ、最後には静まり返り、人知れず息をひきとるだろう。

 では、そうさせているマジョリティにその覚悟があるか。果たしてどうだろうか。正しいことを行なっているはずの政府は、何故か中毒者たちを隔離し、人目から隠す。まるで、恥ずべき行いのように。

 マシューヴォーンは、人々の恥部に目を向けさせる。面白おかしく。

 もちろん、マジョリティに言い分がないわけではないし、全てが間違っているわけではない。ただ、全てを数値化した瞬間、なくなるものもある、と言うことだ。

 

 

・悪役は凡庸と言うよりも、前作が魅力的すぎた。

 個人的な意見だが、前作の悪役は近年見たどの映画の悪役よりも輝いていたし、あの二人組は前作の白眉だった。

 サミュエルとガゼルの関係性は、一言で言えば共犯者だった。しかし、ガゼルの果たした役割はそれ以上だろう。ある時は恋人のように、ある時は母のように、そして仲間のように、なによりも用心棒のように。ガゼルというキャラクターがあったればこそ、サミュエルL・ジャクソンの奔放で憎めないキャラクターに深みが出た。

 今作の麻薬王も、チャーリーと同じような関係にしようとしたのかもしれない。しかし、チャーリーというキャラ自体にそこまで魅力はなく、残念ながら関係性としても中途半端に終わったと思われる。

 

 

・何故ハリーは敵に気づいたのか

 それは誰にもわからないのだ、、、、、、