ボディロッキンで激ヤバ

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【ネタバレ】ダルシム待望論~『カンフーヨガ』を観て~

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 ジャッキー・チェン主演の『カンフーヨガ』を観てきました。ジャッキー・チェンと言えば、海外では昨年公開された『The Foreigner 』の方が観たかったのですが、正月らしいメデタイ気分には丁度いいか、と思い鑑賞してきました。

 後は徒然。

 

・結構面白い

 粗だらけというか、正直に言うと普通の映画としての面白さはないと思う。終始、トンチンカンな映像のオンパレードであり、映像全体の情報量が多かったり(悪役の登場シーンは本当に面白かった。貴族的な服装をした鷲鼻の男が、ワシを手に馬に乗って砂漠を走っている)、時には全く意味のないシーン(カーチェイスシーンでは、ジャッキーの車にライオンが乗っているのだが、ジャッキーとライオンの顔が同期する意外には全く意味がなかった)なども入ってくる。ただし、それらは「ボリウッド的」という魔法の言葉によって緩和され、「まぁ、こういう映画なんだろうなぁ」と流される、また、映画も次々と展開が変わるので、あまり細かいことにこだわってもいられない。

 観客は常に映画に置き去りにされつつ、怒涛の展開の中で繰り出されるジャッキー・チェンの妙技を味わいつつ、ニヤニヤしながら映画を楽しめる。

 はっきり言ってそんなに悪い体験ではない。よく「頭を空っぽにしたら面白い」という文句があるが、この映画の場合その必要はない。ほっておいても頭は空っぽになる。

 

ボリウッド的なハリウッド映画

 インドで生産されているボリウッド映画的なテイストを、ハリウッド的なスケールでやったらこうなるんだろうな、と随所に感じさせる演出があり、個人的にはそこをこそ楽しめた。時折、わざとスローモーションのコマ送りがガタついたりと、わざとボリウッドの技術にまで落としたりする所も面白かった。

 最後のダンスシーンも、ボリウッド的なものではなく、よりハリウッド的な見せ方をしているためか、割と普通に良い映像に見える。

 また、主演の女優たちがおしなべて美しく、インド的な美人ではなく世界的に受けそうな美人を持ってくるあたりは、意識して人選をしているのではないかと思わせる。

 

・それでも残念な所

 別に、残念な所だらけの映画なので特に言うことでもないが、それでもこうしてほしかった、と思わずにはいられないことが2つある。

 

 一つ目は、ジャッキー・チェンの格闘シーンをもっと遅くしてほしかった、ということ。特に、格好良く闘うシーンは、もっと遅くても構わなかったように思う。そうすることで、ジャッキーがカンフーを使うまで、敵はジャッキーを舐める、という状態になる。「考古学者で、しかもチビのおっさんが、何もできやしない」と言う風に。しかし、観客は知っている。一度ジャッキーが構えを取れば、その時、奴らは中国四千年の歴史をその身をもって味わうことになる、ということを。これが、カタルシスを産む。

 最初の朝食シーンでカンフーを見せるのでも構わないが、その場合も、あまり早くなく、ヘロヘロな動きにとどめておけばなお良かった。

 雪原のシーンでカンフー教室をした理由は、恐らくは観客の中だるみを嫌ってのことだとは思うが、正直つまらない時間を長引かせただけに思える。製作者側に我慢がなかったのではないか。

 

 二つ目は、敵の格闘方法がカンフー的なものではなく、もっと別のものにしてほしかった、というもの。

 今回の敵は王子であるが、インドの歴史や伝統などは意味がなく、富こそが意味がある、という思想なのであれば、もっと近代的な(西洋的な)戦い方にしても良かったのではないか。ボクシングや、それこそMMAなどの動きが多ければ、説得力があった気もする。

 もしくは逆に、「殺人ヨガ」のようなものを勝手に作ってしまっても良かったのではないか。この映画の無数にある欠点の一つに「ヨガ要素が後半ほとんど無い」というのもあるが、それを払拭するために、王子にはヨガをモチーフにした殺人拳法でジャッキーに襲いかかってもらいたかった。口から火を吹いたり、遠距離から柔らかい体を活かしたパンチを放ってみたり、第三の目を開いてテレポートしたり。

 姫が「そんなものはヨガではありません!」と叫ぶ。しかし王子は「否! これこそ我らの伝統だ! この血に汚れたヨガマットこそが、我らの王家たる証!」と聞かない。そこへ、ヨガマットを瞬時に引きずるジャッキー。足を取られ、よろけたその隙に、蛇の頭のような連撃を叩き込む。まいった!との声とともに、姫が駆け寄る。「私が間違っていました。あなたの存在も、また私達の歴史」と手を取り合う。笑顔でジャッキーが手を合わせ、横にあったイスに腰掛ける。その後、ダンスが始まる。

 これでよかったのではないか。

 

 とまぁ、阿呆みたいな話を思いついて友だちと話す分には悪くない作品だと思う。